屋根の形状 ごとのメリット・デメリット③|入母屋屋根・腰折れ屋根・越屋根

こんにちは☀
ガイソー山梨店です!

皆様のご自宅の屋根はどのような形状をしていますか?

日本の住宅には様々な屋根の形状が存在し、それぞれにメリットとデメリットがあります。
屋根の形状は、外観だけでなく建物全体の性能や耐久性にも大きな影響を与えています。しかし、ご自宅の屋根の形状がどれにあたるのかを知らないという方も多くいらっしゃいます。
ご自宅の屋根の形状について把握していないと、気が付かないうちに深刻な症状が進行し、建物全体の寿命を縮めてしまう可能性もあります。

そこで今回は、前回に続いて「入母屋屋根」・「腰折れ屋根」・「越屋根」といった 屋根の形状 ごとのメリット・デメリットについて解説していきたいと思います!
これらの屋根は普段見かけることが少ないですが、選択肢を広げるためにもメリット・デメリットをしっかりと把握されることをおすすめいたします!

⑦入母屋屋根(いりもややね・いりおもややね)

入母屋屋根とは、「寄棟屋根の上に切妻屋根の妻側(「へ」のような形状をしている側)が取り付けられたような屋根」のことを指しています。言葉だけだとどんな形状の屋根なのか分かりにくいかもしれませんが、天守閣の屋根が入母屋屋根に近いので、それらをイメージすればなんとなく理解していただけると思います。
日本の伝統的な屋根の形状で、築年数が古い一般住宅や神社寺院で多く採用されています。
和風というイメージが強いからか、粘土瓦やセメント瓦のような瓦屋根でしか施工できないと思われる場合もありますが、近年ではスレート屋根や金属屋根で施工された入母屋屋根も増えてきています。

入母屋屋根は「鼻母屋」が軒よりも内側にあることから、このような名称が付けられたとされています。
ここで言う母屋とは「屋根の骨組みの一部」のことで、鼻母屋は「切妻屋根の妻側に張り出した母屋」を指しています。
敷地内の中心である建物のことを指す「母屋(おもや)」が由来ではないので、入母屋屋根の名称を覚える際は混同しないように注意しましょう。

 屋根の形状 の1つである入母屋屋根
入母屋屋根


入母屋屋根のメリット

入母屋屋根には、以下のようなメリットがあります。

  • 高級感のある美しい外観にすることができる
  • 風の影響を受けにくい
  • 屋根裏の換気性能に優れる


高級感のある美しい外観にすることができる

入母屋屋根の一番のメリットは、「高級感のある美しい外観にすることができる」点であると言えるでしょう。
前述の通り、入母屋屋根は日本の一般住宅で古くから採用されてきた伝統的な形状で、神社仏閣でも用いられているほど格式高いものとなっています。
ご自宅の屋根の形状を入母屋屋根に変更するだけで、建物全体に独自の魅力と風格を付与することができます。
伝統的な形状ということで、和風の住宅で採用されることが多い入母屋屋根ですが、あえて洋風の住宅を入母屋屋根にすることでオリジナリティーあふれる外観となることも少なくありません。
「他と被らない個性的な家に住みたい!」という方は、入母屋屋根を検討されてみることをおすすめいたします。

風の影響を受けにくい

入母屋屋根は四方すべてに屋根面が存在するため、「風の影響を受けにくいというメリットを持っています。
あらゆる方向から吹いてきた風にも対応することができるので、台風による屋根材の飛散を未然に防ぐことが可能です。
さらに、四方すべての屋根面が外壁を雨風や紫外線から保護することで、外壁の塗膜の劣化を抑制することもできます。
このように、入母屋屋根をご自宅の屋根に採用することによって、雨風の被害を最小限に抑えることができるでしょう。

屋根裏の換気性能に優れる

入母屋屋根は切妻屋根の構造を取り入れていることから、「屋根裏の換気性能に優れる」というメリットもあります。
切妻屋根は「2つの傾斜面と1つの棟」によって構成されている屋根であるため、屋根裏の天井が高くなりやすいです。
入母屋屋根もまた高低差のある屋根裏となるため、空気が循環することで優れた換気性能を発揮することができるのです。
屋根裏の換気性能が高くなることで、屋根裏に溜まりやすい湿気や熱を効率よく逃がすことができるようになるため、室温の上昇やカビの発生などを未然に防ぐことが可能です。

入母屋屋根のデメリット

反対に入母屋屋根のデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 工事費用が高くなりやすい
  • 雨漏りが発生しやすい
  • 建物全体の重量が増え、耐震性が低下してしまう


工事費用が高くなりやすい

入母屋屋根は「切妻屋根と寄棟屋根の複合」という非常に複雑な形状をしていることから、「他の形状に比べて工事費用が高くなりやすい」というデメリットがあります。
近年では入母屋屋根の施工経験がある業者が減ってきているため、材料費だけでなく人件費、作業費もかさんでしまいやすいです。
加えて、形状の複雑さによって工期も長くなりやすいので、「工事をできるだけすぐに終わらせてほしい」という方には入母屋屋根はおすすめできません。

雨漏りが発生しやすい

入母屋屋根はその複雑な形状によって「雨漏りが発生しやすい」という致命的なデメリットも持っています。
入母屋屋根は切妻屋根と寄棟屋根がくっつくような形状をしているため、屋根の接合部分も多くなります。
屋根の接合部分が多くなればなるほど、そこから雨水が侵入してしまう可能性もまた高くなりやすいです。もちろん、雨水の侵入を防ぐために接合部分には雨仕舞い(防水加工)が施されていますが、長期間にわたって雨風や紫外線に当たり続けることで、次第に雨仕舞いの効力が失われてしまいます。
加えて、屋根の接合部分が多いということは「屋根の雨漏りがどこから発生したのかが分かりにくい」ということでもあるため、気が付かないうちに屋根内部の腐食にまで進行してしまう可能性もあります。

建物全体の重量が増え、耐震性が低下してしまう

入母屋屋根は切妻屋根と寄棟屋根が1つの屋根となったようなものなので、他の形状に比べて「屋根の重量が大きくなりやすい」というデメリットがあります。
屋根の重量が増えると建物全体の重量もまた増えてしまうため、建物の耐震性が低下してしまいます
地震発生時に建物にかかる力のことを「地震力」といい、地震力は「建物の重さ」×「地震層せん断力」という計算式によって求めることができます。
つまり、建物が重ければ重いほど地震による建物の負荷も大きくなってしまうということです。
さらに、屋根の重量が大きくなると建物の重心が高くなるため、地震発生時の揺れ幅が大きくなってしまいます。揺れ幅が大きいと建物全体にかかるダメージもまた大きくなってしまうので、耐震性が高い住宅に住みたい方にとって入母屋屋根は不適切であると言えるでしょう。

屋根の重量と耐震性の関係については過去のコラムで取り上げておりますので、興味を持たれた方はそちらをご参照ください。
(「耐震性の高い・低い建物 とは?|耐震性を高めるためのリフォーム方法」)


⑧腰折れ屋根(こしおれやね)

腰折れ屋根とは、「屋根の途中から勾配を急にして、2段に折り曲げたような形状の屋根」のことを指しています。簡単に言うと、切妻屋根を屋根面の真ん中あたりで折り曲げたものが腰折れ屋根で、丸みを帯びた形状をしています。
腰折れ屋根は元々は「ギャンブレル屋根」と呼ばれており、ギャンブレル屋根の起源こそヨーロッパですが、18世紀頃に植民地時代のアメリカで広く用いられるようになった後、日本に導入されたとされています。
アメリカの農村地域で大活躍していたことから、日本でも主に北海道や東北地方などの農業が盛んな地域で見られることが多いです。その他では、神奈川県にある向ヶ丘遊園駅で腰折れ屋根が採用されています。
ちなみに、腰折れ屋根の別名として「マンサード屋根」が挙げられている場合もありますが、実はギャンブレル屋根とマンサード屋根は似て非なるもので、マンサード屋根は「寄棟屋根を屋根面の真ん中から折り曲げたような形状」となります。腰折れ屋根とマンサード屋根を混同しないように注意しましょう。

腰折れ屋根は、「腰」が「屋根の真ん中」を指しており、そこを折り曲げるから「腰折れ」屋根と呼ばれるようになったとされています。
実際に腰は人体の真ん中あたりにあるので、屋根の形状の中でもしっくりくる名称と言えるのではないでしょうか。

 屋根の形状 の1つである腰折れ屋根
腰折れ屋根


腰折れ屋根のメリット

腰折れ屋根のメリットとして、以下の3点が挙げられます。

  • 水はけが良い
  • 屋根裏の天井を高くすることができる
  • 敷地面積が小さくても問題なく施工できる


水はけが良い

腰折れ屋根は、「水はけが良い」という非常に大きなメリットを持っています。
元々水はけが良い切妻屋根をさらに折り曲げているため、屋根に当たった雨のほとんどを雨樋にまで送り届けられます。
屋根に雨水が溜まることがないので、屋根の塗膜が雨水によって劣化し、屋根内部に雨水が入り込んでしまうといった事態を未然に防ぐことができます。
また、腰折れ屋根は雨だけでなく雪も溜まりにくいため、屋根の落雪を心配する必要もありません。このことは、北海道や東北地方などの積雪量が多い地域で腰折れ屋根が広く採用されている理由でもあります。

屋根裏の天井を高くすることができる

腰折れ屋根は切妻屋根同様、屋根面に傾斜があることから「屋根裏の天井を高くすることができる」というメリットもあります。
屋根裏の天井を高くすると、空気がスムーズに流れることによって熱や湿気がこもりにくくなります。さらに、湿気を好むカビの発生を抑制することもできるため、屋根裏を寝室や収納スペースとして活用したい場合は、ご自宅の屋根を腰折れ屋根にされることをおすすめいたします。

敷地面積が小さくても問題なく施工できる

また、腰折れ屋根は切妻屋根をさらに折り曲げたような形状をしているので、敷地面積が小さくても問題なく施工することができます
他の形状だと屋根が敷地よりも大きくなってしまうといった場合、腰折れ屋根にすることで敷地の問題を解決できることも多々あります。


腰折れ屋根のデメリット

反対に腰折れ屋根のデメリットとして、以下の2点が挙げられます。

  • 折れ曲がっている部分から雨漏りが発生する可能性がある
  • ソーラーパネルの設置ができない


折れ曲がっている部分から雨漏りが発生する可能性がある

腰折れ屋根は傾斜が変わる部分、つまり折れ曲がっている部分からの雨漏りが発生しやすいというデメリットを持っています。1枚の屋根面にそのまま屋根材を設置できる切妻屋根とは異なり、腰折れ屋根は2つの屋根面を接合することで傾斜を変更しているため、屋根材を地続きに設置するわけにはいかないのです。
折れ曲がっている部分に雨仕舞いを施すことで雨水の侵入を防いでいますが、経年劣化によって雨仕舞いの効果が失われることで屋根内部の雨漏りや腐食につながる可能性があります。
水はけの良さから雨漏りとは無縁かと思いきや、腰折れ屋根にはこのような弱点も存在します。

ソーラーパネルの設置ができない

腰折れ屋根は「ソーラーパネルの設置ができない」というデメリットも持っています。屋根面を折り曲げたことによって、ソーラーパネルを設置するための十分な面積を確保することができないからです。
現在ご自宅の屋根にソーラーパネルが設置されている方、もしくはこれからソーラーパネルの設置を検討されている方などには、腰折れ屋根はあまりおすすめできません。


⑨越屋根(こしやね)

越屋根とは、「切妻屋根の棟の中央に設置された小さな屋根」のことを指しています。切妻屋根の中央を持ち上げ、そこに小さな屋根を取り付ける形となるため、もしかしたら「切妻屋根のオプション」と言った方がしっくりくるかもしれません。
入母屋屋根同様、越屋根は日本の伝統的な屋根の形状であり、一般住宅や神社仏閣などで広く採用されていました。
越屋根は、建物の上部に設けられた開口部を保護するために設置されています。この開口部は元々かまどの煙を外部に逃がすために設置されていましたが、現代では採光のために越屋根が採用されることが多いです。

越屋根は開口部を覆うように取り付けられているため、「覆う・上から被せる」という意味を持った「越」からその名称がつけられたと推測されます。

 屋根の形状 の1つである越屋根
越屋根


越屋根のメリット

越屋根のメリットとして、以下の2点が挙げられます。

  • 通気性に優れる
  • 室内に日光を取り込むことができる


通気性に優れる

前述の通り、越屋根を採用している住宅には高所に開口部が設けられていることから、「通気性に優れる」というメリットがあります。
開口部が高所にあることで、空気の循環が効率よく行われるようになります。そのため、室内に溜まって熱や湿気をしっかりと外部に逃がすことができるのです。
ご自宅の通気性が不十分であると感じている方は、越屋根に変更することで夏場でも快適に過ごせるご自宅にすることが可能です。

室内に日光を取り込むことができる

越屋根に採光窓を設置することで、日光を取り込んで室内を明るくすることができます
もしかしたら、「日光を取り込むなら天窓でもいいのでは?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。天窓は屋根に直接取り付けられる窓なので、確かにわざわざ越屋根を採用する必要がないように思えます。
しかし、越屋根の採光窓は屋根に取り付けるのではなく、立ち上がり部分(地面から垂直に立ち上がった部分)に設置されます。越屋根が雨風や紫外線から採光窓を保護することができるので、天窓に比べて劣化しにくいのです。
そのため、明るい部屋で生活したいという方は越屋根がおすすめです。


越屋根のデメリット

反対に越屋根のデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 工事費用が高くなりやすい
  • 接合部分から雨漏りが発生しやすい
  • ソーラーパネルの設置ができない


工事費用が高くなりやすい

越屋根は「切妻屋根の棟の真ん中を持ち上げ、小さな屋根を設置する」という、屋根の形状の中でも複雑な形状をしていることから、「工事費用が高くなりやすい」というデメリットを持っています。
越屋根の施工経験が少ない業者も増えてきていることから、材料費だけでなく作業費も高くなってしまうのです。
「工事費用をできるだけ安く抑えたい!」という方は、越屋根ではなく他の屋根の形状を採用された方がいいかもしれません。

接合部分から雨漏りが発生しやすい

越屋根には「屋根の接合部分から雨漏りが発生しやすい」という大きなデメリットもあります。
接合部分に施されている雨仕舞いが経年劣化によって失われることで、屋根内部の雨漏りや腐食が発生してしまう可能性があります。
ご自宅の屋根を越屋根にする場合は、定期的なメンテナンスを欠かさずに行うようにしましょう。

ソーラーパネルの設置ができない

越屋根は切妻屋根の真ん中を持ち上げる形となるので、ソーラーパネルを設置するために必要なスペースを確保することができません。
ソーラーパネルによる発電を検討されている方は、片流れ屋根や陸屋根などの他の形状がおすすめです。


まとめ

以上、「入母屋屋根」「腰折れ屋根」「越屋根」それぞれのメリット・デメリットについてお話しさせていただきました。
屋根裏の換気性能を高め、高級感のある外観にしたいのであれば「入母屋屋根」、敷地面積が小さかったり豪雪地帯にお住まいの場合は「腰折れ屋根」、通気性を向上させ、室内を明るくしたいのであれば「越屋根」といったように、それぞれのメリット・デメリットをしっかりと把握した上で、「どのようなご自宅に住みたいか」によって屋根の形状を選ぶようにしましょう。

次回も別の屋根の形状のメリット・デメリットについて解説していきたいと思いますので、そちらもお読みいただけると嬉しいです(*^^*)

屋根のリフォーム工事を検討されている方は、ぜひお気軽にガイソー山梨店にご相談ください!