塗膜を劣化させる ラジカル とは?|ラジカルが発生する原因と対策方法

こんにちは☀
ガイソー横浜港南店・町田店です!

外壁や屋根の塗膜が劣化してしまう原因として、真っ先に挙げられるのは「紫外線」です。
紫外線は人体に悪影響を及ぼすことがあるため、なんとなく「塗料にも良くはなさそう」という感覚を持たれている方が多いと思います。

なぜ紫外線によって塗膜が劣化してしまうのかというと、塗膜に含まれる酸化チタンと紫外線が反応し、「ラジカル」という物質が発生するためです。
ラジカルが塗膜を構成する要素を攻撃することで塗膜の耐久性や耐候性が低下し、寿命が早くなってしまうのです。
そんなラジカルは塗料メーカーにとっても大敵であり、「ラジカル制御型塗料」と呼ばれる塗料が開発・販売されていたりもします。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」というわけではありませんが、ラジカルによる塗膜の劣化を防止するためには、まずラジカルについてしっかりと理解する必要があります。そして、その後にラジカル制御型塗料について調べることで、ラジカル対策として納得のいく塗料を見つけられることでしょう。
そこで今回は、ラジカルが発生する原因と塗膜を劣化させる理由について詳しく解説し、ガイソーで取り扱っているラジカル制御型塗料をご紹介したいと思います!


理解しておきたい基本的な化学用語(読まなくてもOK)

ラジカルについて説明するためには、中学・高校レベルの化学知識が必要となります。
そこで、まずこの項では原子や分子などのような「初歩的ではあるが、しっかりと理解しておきたい化学用語」について解説していきたいと思います!
後々の解説時に混乱しないように、あらかじめ用語の違いを確認しておくというだけなので、「理系なので基礎的な用語はしっかりと理解している」「文系だけどそれぞれの違いについてはなんとなくイメージできる」といった方は、この項は読み飛ばして次の「ラジカルが発生する原因|塗膜を劣化させる理由」を読み始めていただいても問題ありません。
また、解説といっても専門的な内容には触れませんので、中学時代の授業の復習をするつもりで気軽にお読みください!

ここでは、以下の3つの化学用語について解説していきます。


  • 原子
  • 分子
  • 電子


まず原子とは、「物質を構成する基本的な粒子」「物質の基本構成単位」のことを指しており、1つの「原子核」と後述する複数の「電子」でできています。
この世に存在するすべての物質は原子によって構成されており、基本構成単位ともあるように、物質を分解していけば最後には必ず原子が残ります。

元素」という原子に似た言葉がありますが、元素は「原子の種類」を意味します。原子はある物質を構成している粒子のすべてに該当する言葉なので、ある物質が具体的に「どの種類の原子」によって構成されているのかは分かりませんが、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)などの元素名が存在することで、はじめて原子の種類を特定することが可能となるのです。
つまり、原子は言葉として非常にアバウトであり、原子の種類を特定するために元素という概念が用いられているということになります。

原子核と電子のフリーイラスト
原子核と電子


分子は「原子が2つ以上集まってできた物質」を意味しています。
どの種類の原子が何個くっつくかは分子によって異なり、1種類の原子だけが結合してできた物質は「単体」、2種類以上の原子であれば「化合物」と呼称されます。
人体や洋服、食べ物などの日常生活でよく目にする物質は非常に膨大な量の分子によって構成されており、分子量が10000以上になったものを「高分子(ポリマー)」と呼びます。反対に分子量が数百程度であるものを「低分子(モノマー)」と呼称し、こちらは水や酸素、窒素などが該当します。

分子のフリーイラスト
分子


そして電子とは、「素粒子(物質を構成している最小単位の粒子)の一種で、電気を帯びた粒子」のことを指しています。
百数年前までは「原子が物質の最小単位である」と考えられていましたが、その原子を構成するさらに小さな粒子が発見されたことにより、電子や原子核などの素粒子の存在が人々に認識され始めました。

電子には「分子内の原子と原子を結合させる」「色や磁性などのような物質の性質を決定する」といった重要な役割を持っています。
物質の性質は原子内の電子の数や配置によって決められており、少しでも電子に変化が生じれば物質の性質もまた変化します。

原子内に存在する電子は基本的に偶数ですが、電子の増減によって奇数、つまり対が存在しない電子が出てしまう可能性があります。
そのような状態の原子は物質として「不安定」であり、他の原子や分子への反応性が非常に高くなるとされています。足りない電子を補うために、他の物質と化学反応を起こして電子を受け取ろうとするからです。
詳しくは次の項で解説しますが、このような物質の「不安定」な状態がラジカルの発生に大きく関わってきます。

ラジカル が発生する原因|塗膜を劣化させる理由

基本的な化学用語を確認したところで、早速ラジカルが発生する原因と塗膜を劣化させる理由について解説していきたいと思います。

ラジカルは前述の通り、塗料内の酸化チタンと紫外線が反応することによって発生します。
酸化チタンとは、チタン鉱石という酸化鉱物から生産される白色の無機化合物のことです。優れた着色力・隠蔽力(素地の色を覆い隠す能力)を持っており、人体への影響も少ないとして、食品や医薬品、化粧品などの様々な分野で活用されています。建築分野でも、白色顔料としてほとんどすべての塗料に配合されています

また、酸化チタンは高い「紫外線散乱効果」も持っているとされます。散乱とは、光が物質を構成する分子・粒子に衝突することでいろいろな方向に進路を変更する現象のことで、要は様々な方向に光が反射することを意味しています。紫外線散乱効果は、その名の通りに紫外線に対して効果を発揮し、紫外線が透過するのを未然に防ぐことができます。
酸化チタンの紫外線散乱効果は非常に高く、日焼け止めクリームの主成分として配合されているほどです。

酸化チタンの特長について見ていくと、「酸化チタンが優れた紫外線散乱効果を持っているのなら、塗膜内に侵入する紫外線も散乱させてラジカルの発生を防ぐことができるのでは?」と思ってしまいますが、残念ながらそうはいきません。紫外線散乱効果はあくまで「紫外線が物質と衝突したとき」に発揮されるため、酸化チタンと紫外線の反応が起こる前に紫外線を散乱させることはできないのです。

では、酸化チタンと紫外線とでは具体的にどのような反応が発生するのでしょうか。

酸化チタンに紫外線が当たると、「光触媒作用」が発揮されます。光触媒とは、光が当たると様々な化学反応を促進させる物質のことで、酸化チタンも光触媒の1つです。
光触媒としての酸化チタンは「酸化」と「還元」という化学反応を活発に行うようになります。酸化は「ある物質が電子を失う現象」で、反対に還元は「ある物質が電子を受け取る現象」です。
まず、酸化チタンの酸化が起こることで、電子が欠けた状態となります。前述したように、電子が欠けた物質は非常に不安定であり、自らを安定させるために他の原子・分子への反応性が高くなります。すると今度は還元反応が起こり、塗膜内の他の物質から電子を奪ってしまいます。この「酸化チタンに電子を奪われて不安定になった物質」が、実はラジカルの正体なのです。

ラジカルも酸化チタンと同じように、自らの安定のために他の物質から電子を奪おうとします。
そんなラジカルが塗料内の有機物(顔料や樹脂など)の結合を切断し、バラバラの状態となることで、塗膜全体の耐久性・耐候性が衰えてしまうというわけです。


ラジカルの発生と塗膜劣化の原因は「酸化チタンの光触媒作用から始まる悪循環」だったわけですが、酸化チタンの光触媒作用は決して悪いものではありません。
酸化チタンの光触媒作用を応用すると非常に優れた「分解力」が発揮され、汚れやアルコール、細菌などの様々な物質を分解することができます。この分解力から防汚性、防菌性が期待できるとして、酸化チタンは光触媒としても様々な分野で活用されています。
酸化チタン自体はこれから先も優れた白色顔料として使われ続けるでしょうから、まさに「物は使いよう」というわけです。

ラジカル による劣化対策

ラジカルが発生する原因と塗膜を劣化させる理由が分かったところで、ここではラジカルの対策方法をご紹介したいと思います。

ラジカルの対策方法としては、以下の2点が挙げられます。

  • クリア塗料による塗装(クリア塗装)
  • ラジカル制御型塗料による塗装


まず、クリア塗料とは「無色透明な塗料」のことを指しています。クリア塗料には塗膜の色を決定する顔料が一切配合されていないため、無色透明な塗膜を作り出すことができるのです。
顔料が一切入っていない、つまり白色顔料である酸化チタンも含まれていないということから、塗膜に紫外線が当たっても酸化チタンの光触媒作用は起こらず、当然ラジカルも発生しないことになります。
要するに、「ラジカルが発生する原因はもう分かりきっているのだから、そもそも原因である酸化チタンが配合されていない塗料で塗装すればいい」ということです。
確かにクリア塗装であれば、ラジカルの発生と破壊活動を未然に防ぐことはできます。しかし、クリア塗装は「施工できる素材が限られている(光触媒や撥水加工など、特殊なコーティングが施された外壁には塗装不可)」、「下地のひび割れや傷を隠せない」といったデメリットだけでなく、「ご自宅の外壁が無色透明に固定される」というご自宅の外観にこだわる人には見過ごせない点も存在します。
ラジカル対策を最も重視するのであれば、次にご紹介する「ラジカル制御型塗料」の方をおすすめいたします。


ラジカル制御型塗料は、読んで字の如く「ラジカルの発生と活動を制御する」塗料になります。
各メーカーから多くのラジカル制御型塗料が開発・販売されていますが、今回はガイソーで取り扱っている「ガイソーウォールマイティシリコン」を例に解説していきたいと思います。

 ラジカル 制御型塗料のガイソーウォールマイティシリコンのバナー画像

ガイソーウォールマイティシリコンには、「ラジカルバリアー」と「HALS(光安定剤)」といったラジカル制御技術が施されています。
まずラジカルバリアーですが、これは塗料内の酸化チタンの表面を覆った特殊なバリアー層のことです。ラジカルバリアーによって酸化チタンに当たる紫外線の量を最小限に抑えられることで、酸化チタンの光触媒作用が発生しにくくなります。
紫外線を完全にシャットアウトすることは困難なので、どうしてもラジカルは発生してしまいますが、発生したラジカルはラジカルバリアー内に閉じ込められることになるため、塗膜内での活動が困難となります。
しかし、ラジカルバリアーを脱出するラジカルもわずかながらも存在し、そのまま塗膜内部を漂って自らの安定化を図ろうとします。そこで今度はHALSの出番というわけです。

HALSは「発生したラジカルを捕捉し、無害化させる」効果を持っており、まさにラジカルの特効薬と言える添加剤です。
その効果の通り、バリアー層を抜け出したラジカルを捕らえて無害化させることで、ラジカルの破壊活動を未然に防ぐことができるようになるのです。

このように、ラジカル制御型塗料はラジカルの発生と活動を抑制するための独自技術が施されており、ラジカル対策としてうってつけな塗料となっています!
もちろん、ラジカル制御型塗料にはその他の機能もしっかり備え付けられているため(ガイソーウォールマイティシリコンであればセルフクリーニング機能など)、ラジカルに一点特化でそれ以外はからっきし……なんてことはありません。
「できるだけ長持ちする塗膜にしたい」という方は、ぜひラジカル制御型塗料を検討されてみてはいかがでしょうか。

まとめ

以上、ラジカルが発生する原因と塗膜を劣化させる理由、ラジカルの対策方法についてそれぞれ解説させていただきました。
ラジカルは塗膜内の酸化チタンが紫外線と反応することによって発生するため、酸化チタンが配合されていない「クリア塗料」であれば確実にラジカルの発生を防ぐことは可能です。
しかし、「ご自宅の外壁が無色透明に固定される」という人によっては大きな問題も存在するため、ラジカル対策という点では「ラジカル制御型塗料」の方をおすすめさせていただきました。
ご自宅のリフォーム工事を検討されている方は、ぜひラジカル制御型塗料を候補の1つに加えられてみてはいかがでしょうか。

ガイソーではガイソーウォールマイティシリコン以外にも様々なラジカル制御型塗料を取り扱っておりますので、興味を持たれた方はぜひお気軽に弊社までご相談ください!